「小規模事業者持続化補助金」は、全国の商工会議所が主催する補助金の制度です。小規模事業者を対象に、事業計画書に基づいて採択された場合、一定の経費補助が受けられる制度になります。
この記事では、製品やサービスをPRするための広告宣伝費にも使える小規模事業者補助金について、概要・書類作成方法・申請方法・スケジュール等についての詳しい内容を解説します。
目次
小規模事業者持続化補助金とは?
小規模事業者持続化補助金は、小規模事業者が、「販路開拓」や「業務効率化(生産性向上)」のための企業活動でかかる「経費の一部」を国が支援してくれる制度になります。
具体的には、DXのための自社システム開発や、販路開拓のための広告宣伝費、生産性向上のための設備投資などで使う経費にかかった費用の約2/3(赤字企業で賃上げ枠を選択した場合は3/4)を補充してくれる制度です。
例えば、現在紙ベースで対応している売上管理業務を、自社システムとして開発し、かかった経費が300万円の場合、そのうちの200万円を補助金によってまかなえるといった内容になります。(申請枠によって補助金で受け取れる上限額が変わります)
申請すれば誰でも補助金が需給できるわけではなく、「事業計画書」の作成や「申請書類一式」の準備が必要で、「採択」されて初めて、補助金を使うことができる権利を得ることができます。
(過去開催)「一般型」と「低感染リスク型ビジネス枠」
2022年(令和4年)3月までは、小規模事業者持続化補助金には、「一般型」と「低感染リスク型ビジネス枠(新型コロナ対応枠)」の2つの種類がありましたが、2022年(令和4年)3月以降は「一般型」のみの公募に変更されました。
令和5年度の補助枠について
2022年(令和4年度)から、小規模事業者持続化補助金「一般型(補助金上限50万円)」に、通常枠に加えて、「新設枠(補助金上限100~200万円)」が追加されました。
2023年(令和5年度)からは、「新設枠の中のインボイス枠」が廃止され、その代わりに免税事業者からインボイス発行事業者に転換する事業者には一律+50万円の補助金上限額が上乗せされる内容に変更される予定です。
通常枠に申請できる条件は、「小規模事業者であること」です。各新設枠に申請できる条件は、それぞれ下記のような内容になります。
類型 | 通常枠 | 賃金引上げ枠 | 卒業枠 | 後継者支援枠 | 創業枠 | インボイス枠(令和5年から廃止予定) |
---|---|---|---|---|---|---|
補助率 | 2/3 | 2/3(赤字事業者の場合3/4) | 2/3 | 2/3 | 2/3 | 2/3 |
補助上限 | 50万円 | 200万円 | 200万円 | 200万円 | 200万円 | 100万円 |
インボイス特例 | 補助上限額に追加で+50万円上乗せ(補助金上限額が50万円の場合、100万円に補助額アップ) | |||||
申請要件 | 誰でも可能 | 従業員に対する最低賃金の引上げが条件 | 従業員が増員になり、小規模事業者の要件を超えた場合(補助事業終了時にカウント) | 事業継承を行う予定で、「アトツギ甲子園」のファイナリストになった | 過去3年以内に、自治体より「特定創業支援等事業」を受けたことがある | 2021/9/30から2023/9/30の間、免税事業者の期間があり、かつ適格請求書発行事業者へ登録をした |
通常枠以外で申請する場合、特定の条件を満たす必要があります。
それぞれに細かい条件があるため、「公募要領」をよく確認しておき、該当するものがある場合、事前に必要な書類をそろえておきましょう。
申請対象となる事業者の条件
対象となる小規模事業者は、従業員数が5名以下または20名以下(宿泊・娯楽・製造業の場合)であることが条件です。それ以上の規模の事業者の場合、別の助成金制度を利用する必要があります。
通常は、個人事業主や営利法人(株式会社、合資会社、合同会社等)が該当します。
また、直近過去3年分の課税所得の平均額が15億円を超えていないことや株式保有比率などの制限もあります。
公募のスケジュールについて
公募の残りスケジュールは下記の表のとおりになります。2023年分(令和4年度補正予算)については2023年2月現在、まだ公表されておらず、順次スケジュールが発表される予定です。
回号 | 第7回 | 第8回 | 第9回 | 第10回 | 第11回 |
---|---|---|---|---|---|
締切り | 2022/02/04(金) | 2022/06/3(金) | 2022/09/20(火) | 2022/12/9(金) | 2023/02/20(月) |
採択結果 | 2022/04/27(水) | 2022/08/31(水) | 2022/11/25(金) | 2023/02/06(月) | 2023/04月末頃 |
※申請して不採択になった場合でも、次回の申請でまた申し込みすることが可能です。
※商工会議所に「様式4」の書類を発行してもらう必要があるため、締切り1週間前には書類を作成して、商工会議所に持参する必要があります。
補助金の「採択率」とは?
採択率とは、申請件数に対して審査が通った申請者の割合のことをいいます。2021年からの採択率の結果を見ると、次のようになっています。
結果 | 第1回 | 第2回 | 第3回 | 第4回 | 第5回 | 第6回 | 第7回 | 第8回 | 第9回 | 第10回 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
申請者数 | 7,827件 | 10,205件 | 8,056件 | 8,243件 | 12,738件 | 9,914件 | 9,339件 | 11,279件 | 11,467件 | 9,844件 |
採択者数 | 7,308 | 12,478 | 7,040 | 7,128 | 6,869 | 6,846 | 6,517 | 7,098 | 7,344 | 6,248 |
採択率 | 90.9% | 65.1% | 51.6% | 44.2% | 53.9% | 69.1% | 69.8% | 62.9% | 64.0% | 63.5% |
数字を見ると、回号ごとにバラつきはありますが、平均的に50%~70%と高い採択率になっています。半数以上が採択されたということになりますので、事業計画をしっかり作り準備をすれば、採択される可能性は十分にあります。
小規模事業者持続化補助金に申請するために必要なもの
小規模事業者持続化補助金の経費として認められるものは「小規模事業者が地道な販路拡大をするために必要な費用」が対象です。何でも経費として認められるわけではないので、事前に「事業計画書」を作成し、経費の内訳をよく検討しておく必要があります。(採択後に、見積書、契約書、納品書、支払い証明書などを1つ1つ用意する必要があり大変です)
また、申請に際しては、納税証明書や事業証明等の公式書類準備に加え、電子申請のためのjGrantsアカウントの登録が必要です。
申請可能な予算項目について
商工会議所の公式ホームページによると、経費として申請可能な項目には次のようなものがあります。
【対象となる事業経費の例】
- ①機械装置等(単価が50万円未満の資材)
- ②広報費(チラシ・カタログ・紙媒体広告・看板・DM発送費等)
- ③ウェブサイト関連費(ホームページ作成・インターネット広告・動画作成・SEO対策・システム開発・SNS広告等)※補助金確定金額の1/4までが上限
- ④展示会等出展費(展示会出店にかかる経費全般)
- ⑤旅費(展示会出展や、資材調達のための宿泊代、飛行機代、電車代等)
- ⑥開発費(新商品開発のための原材料費・パッケージデザイン費)
- ⑦資料購入費(10万円未満の雑誌や図書)
- ⑧雑役務費(アルバイトや派遣に支払う経費)
- ⑨借料(設備機器のリース・レンタル料)※契約書が必要
- ⑩設備処分費(作業スペースを拡大する目的で不要資材を処分するための経費)
- ⑪委託・外注費(自ら実行することが困難な作業に限る)
2021年までは、IT導入に関わる経費を対象とした内容が充実していましたが、2022年からは、展示会などを中心としたイベント参加経費が中心になっているようです。
経費項目は、事業計画に沿って、事前に必要な経費を算出した上で申請を行わなければいけません。申請して採択された後から、経費の項目や内容を修正しようとすると、さらに大きな手間がかかるため、事前にいくらかかるかを調べておく必要があります。
見積り書がとれる場合は事前に用意しておき、採択後の実績報告のことも考えた上で書類を準備しておいた方が良いでしょう。
ウェブサイト関連費の経費の考え方
ホームページ制作やシステム開発、ECサイト構築、デジタル広告運用で使える費用は、補助金総額の1/4が上限に定められています。補助金を満額で申請した場合、次の表ような組み合わせになります。
「ウェブサイト関連費以外の経費」には、広告宣伝費を含めることができるため、チラシの作成・ポスティング、パンフレット作成、看板製作などはそちらで計上することができます。
補助上限額 | 50万円 | 100万円 | 200万円 |
---|---|---|---|
経費の総額 | 75万円 | 150万円 | 300万円 |
ウェブサイト関連費 | 12.5万円 | 25万円 | 50万円 |
ウェブサイト関連費以外の経費 | 62.5万円 | 125万円 | 250万円 |
申請時に必要な書類のそろえ方
書類は、公式サイトの公募要項を読んで、各様式の書類を用意します。申請書、事業計画書、宣誓・同意書、補助事業計画書(各種経費を計算したExcel)等をダウンロードして作成します。各様式に加え、申請枠ごとに必要な書類が異なります。
また、申請方法は【電子申請(JGrants)】を利用する場合、書類をExcelやPDFなどのフォーマットで用意する必要があります。
さらに申請書類一式を用意した後、地域の商工会議所に依頼すると、申請書に不備がないかどうかを確認後に、様式4の書類を発行してくれます。
申請の流れについて
一般的な申請の流れは、次のようになります。
- ① gBizIDを取得する(約2週間)
- ② 必要書類を準備する(※申請枠によって、必要書類が異なります)
- ③ 近くの商工会議所に行って、紙で出力した申請書類一式を確認してもらい、「様式4」の書類を発行してもらう(約1週間)
- ④ 発行したgBizIDを使って、jGrantsから申請を行う(郵送でも申請は可能)
- オンライン申請を利用すると「電子申請加点」がつくため、採択される可能性があがります。
- 事業計画書を作成した後は、中小企業診断士さんや専門家に確認してもらった方が安心です。
事業計画書作成のポイント
小規模事業者持続化補助金には審査ポイントがあり、事業計画がポイントを踏まえているかどうかをチェックされます。さらに加点ポイントとなる項目があり、条件を満たすとさらに採択されやすくなっています。
公募要領のP.23に記載の内容です。申請する資格を満たし、計画に対して実行能力があるかどうかを見られます。
- 必要な提出資料がすべて提出されていること
- 「補助対象者」「補助対象事業」「補助率等」「補助対象経費」の要件及び記載内容に合致すること
- 補助事業を遂行するために必要な能力を有すること
- 小規模事業者が主体的に活動し、その技術やノウハウ等を基にした取組であること
事業計画の審査観点
- 自社の経営状況を適切に把握し、製品やサービス、強みについて適切に把握しているかどうか
- 経営方針・目標・今後のプランは、自社の強みを踏まえているか
- 経営方針・目標・今後のプランは、対象とする市場(商圏)の特性を踏まえているか
- 補助事業計画は具体的で、実現可能性が高いものになっているか
- 補助事業計画は、経営計画の今後の方針・目標を達成するために必要かつ有効なものか
- 補助事業計画は、小規模事業者ならではの創意工夫があるか
- 補助事業計画は、ITを有効に活用する取り組みが見られるか
- 補助事業計画に合致した事業実施に必要なものとなっているか
- 事業費の計上・見積りが正確かつ明確で、必ず必要な金額が計上されているか
ざっくりまとめると、「自分たちならではの強みを活かし、将来性のある事業計画になっているか、実現可能性が高いか、IT化や生産性向上につながっているか?」がポイントです。さらに、それにかかる費用に妥当性があり、必要不可欠であるということが伝わる内容だと採択されやすくなるということになります。
ちなみに、公式サイトには業種別に作成された事業計画書の見本が置いてあります。こちらをご自身の事業に合わせてカスタマイズし、第3者が読んだときにわかりやすく伝わるどうかもポイントになります。
公式サイトに掲載中の事業計画の見本
公式サイトに事業計画の見本が展示してあります。「経営計画」のページから、8ページほどの計画を策定することができるため、基本的に8ページ用意する方が多いようです。
オンライン申請(JGrants)の利用方法
JGrantsを利用してオンラインで申請するには、事前に「gBizID」を取得する必要があります。gBizIDは、複数の行政サービスを同じIDとパスワードで利用することができるようになる認証システムです。(ID発行までに3週間程度かかるため、早めに登録しておく方が良いと思います)
gBizIDを取得しておくと、小規模事業者持続化補助金以外にも、各種助成金・補助金等の申請にも利用できます。
jGrantsを利用する場合でも、gBizIDでIDを取得後、その発行したアカウントでログインを行って申請作業を進めます。PC操作が苦手な方には少しハードルが高いですが、項目にしたがって必要書類をアップロードしていくだけですので、操作自体は難しくないかと思います。
小規模事業者持続化補助金に申請する際の注意事項
jGrantsから申請すると、公募締切り日前までに申請内容を修正することができます。経費項目などを採択された後に修正するのは大変ですので、最初に気を付けた方が良いことをピックアップしました。
どんな項目でも経費になるわけではない
補助金事業は、あくまで事業計画に従い、「対象となる経費」を使ったことを証明することで、補助金として受取ることができるものです。
申請した事業で発生する「必ず必要な経費」で、例えば一般的な事業に利用できる「自動車」「パソコン」「事務用品」などは、対象にならない可能性が大きいです。
経費項目に詳しい専門家に聞くか、事務局に問い合わせるなど、事前に調べておいて、問題がないかどうかを確認しておくと良いでしょう。
申請してから、入金完了までに1年近い時間がかかる
小規模事業者持続化補助金は、補助金の中では50~200万円の上限額で、規模としては大きな事業に該当しません。ですが、申請から採択、採択から実績報告、実績報告から入金、まで約1年程度かかります。
採択後に、事業に対応してくれる事業者ともしっかり打合せを行い、かかる経費や項目について書類をしっかり用意してもらい、事業完了後も気を抜かず、最後の報告まで忘れないように対応していく必要があります。
また、経費を支払った後は、入金までに時間がかかるため、流動資産(現金)がしばらくの間動かせなくなることも考えておいた方が安心です。
小規模事業者持続化補助金が採択されたら?
申請して小規模事業者持続化補助金が採択されたら、事業計画にしたがって事業を開始します。
申請書の内容に従って事業を実施する
かかった経費や、どういった取り組みを行ったかについて、後から実績報告する必要があるため、見積書や契約書(捺印あり)、発注書等、経費項目にしたがった書類を用意しながら進める必要があります。
実績報告提出期限までに、実績報告を行う
事業が完了したら、銀行振込みによってかかった経費をすべて支払い、実績報告を行います。
実績報告は、採択回号ごとに締切りがあり、期限を過ぎてしまうと補助金が受け取れなくなってしまうため注意が必要です。
実績報告のためにも事業報告等の書類作成が必要になるため、あらかじめ何が必要かを確認しておき、書類がそろった状態で申請を行います。
「通知済み」になるまで差し戻しに対応する
jGrantsから実績報告をしてしばらく経つと、報告に対して事務局から差し戻しが来る可能性があります。不備がある箇所について、細かい指摘があるため、1つ1つ確認を行い、不備がないように書類を修正して再提出します。
「日付」「宛先」「書類のフォーマット」「報告した内容に記載がある文章や中身」など、小さな見落としに対しても、チェックが入る可能性があるため、根気よく対応する必要があります。
その他の助成金制度について
小規模事業者持続化補助金のほかにも、個人事業主、中小企業が利用できる補助金制度がいくつかあります。
ホームページ制作やネットショップ開業にも使える補助金は、次の3つです。上限金額、審査のために必要な書類や、申請するための条件もそれぞれに異なります。
補助金 | IT導入補助金 | ものづくり補助金 | 事業再構築補助金 |
---|---|---|---|
対象 | ITツール導入やテレワークを行うための環境整備 | 革新的サービス開発・試作 品開発・生産プロセスの改善を行うための設備投資 | 思い切った事業内容の転換(オンラインサービスの導入等) |
条件 | 登録事業者が提供するIT化ツールを導入する必要がある | 付加価値のある事業計画 従業員の賃上げ計画 |
コロナ化で売上が10%以上減少している事業者 |
金額 | 30~450万円 | 750~3,000万円 | 100~1億円 |
補助率 | 1/2以内 | 1/2または2/3 | 1/2または2/3 |
それぞれ、事業規模や事業計画によって補助率や上限金額が変わってきます。また、補助金額が大きいものになると、中小企業診断士や行政書士などの専門家にも相談して、しっかりとした事業計画書を用意し、長期的に事業を進める計画を立てる必要があります。
早めに申請すれば、「もし不採択になった場合でも、また次の回に申請する」ということもできるため、専門家に相談しながら早めに用意して資金繰りに役立てましょう。
補助金申請に関して、EzONEでもご相談を承っております。「高採択率&事前着手金なし」で経験値の高い中小企業診断士さんと業務提携していますので、ぜひお気軽にご相談ください!→ お問い合わせ窓口