個人事業を開始して、5ヵ月が経過しようとしています。組織の中で働いていた時は、与えられた環境でどのように過ごすかについていつも考えていましたが、個人事業を始めてから、いろいろな見方が変わってくるようになりました。
今回は「組織で働くこと」と「個人事業主になること(起業すること)」の違いをふまえつつ、仕事と人生における関わり方、迷ったときの選択肢について私自身の経験をもとにお話します。
会社員としての組織の中で過ごすこととは?
Wikipediaによると、「組織」とは次のような説明がされています。
社会科学における組織(そしき、(英: organization)は、共通の目標を有し、目標達成のために協働を行う、何らかの手段で統制された複数の人々の行為やコミュニケーションによって構成されるシステムのことである。 Wikipedia
「組織」とは、「共通の目的を持って、何か1つのことを達成するために編成された集団」ということです。
会社組織の場合、「所属部署」があり、「チーム」があり、その中の個人の役割で小さなグループがあって、会社組織全体を構成するものになっています。会社自体は小さなパーツの集合体のようなものだと考えることができます。
組織の中で働くこと
事業規模が大きい会社だと、同じ会社に所属していても、部署や事業所単位で知らない人同士も多いはずです。
ですので、どういった組織の中で仕事するにしても(大企業であれ、中小企業であれ)、一般職である場合は、自分が所属するチームを超えて他部署と連携する機会はそう頻繁には訪れません。
会議や打ち合わせ以外で他部署と交流しないため、チームの中の人間関係が「基本的に自分の日常に影響するすべての構成要素」になります。
組織の中で求められていること

会社員として仕事をするということは、小さな「チーム」の中での人間関係の影響力が大きく、それより先であったとしても、(営業職などをのぞき)同じフロアにいる人たちとの関係がほぼ全ての世界の中にいるということです。
組織の中にいる以上「与えられた役割をきちんとこなすこと」が最重要課題であり、その中で個人個人がどうふるまうかまでは、そこまで重要ではない場合が多いです。
今後の人生の目標をどう定める?
今後のキャリアアップにつながる形にするためには、業務で結果を出して、周りからの評価を獲得し、より地位の高い役職を獲得するための、「出世」を目指すことが目標になっていきます。
会社組織の中にいる以上、「出世」を目指すのか、思い切って働く環境を変えるために「独立起業」を目指すのか、組織の一部として与えらえれた役割に従事するのか(プライベートを優先するのか)、個人の考え方によって進路が変わってきます。
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出世を目指す場合→ 組織の中での立ち回り方が重要。与えられた仕事をいかに効率良く回し、結果を出すかが評価につながる。また、人をまとめるリーダーシップも求められる。
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独立起業を目指す場合→ 個人としての事業運用スキルが重要。経営者目線で物事を考える能力が求められる。また、地域社会やまわりとの人間関係を大事にし、いかに社会貢献するかということも大切。
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一般的な会社員を継続する場合→ 不備なく仕事をこなすことが重要。余暇やプライベートを重視して、友達や家族との人間関係を大事にしながら、仕事よりもライフスタイルにこだわる方が大切。
自分自身がいま存在する環境が、果たして先々に求めるライフスタイルとつながっているのか?それを確認しながら、日常を過ごすことで、一定の目標を持ちやすくなっていくはずです。
会社員から独立して起業する際に意識することは?
会社員をやめて独立しようと考える人は、「やりたいことがある」「現在に不満がある」「将来に不安がある」などさまざまな理由があってのことだと思います。
私自身が個人事業を開始したのは、実家が個人事業をやっており、その姿を見て育った影響が大きかったことがあります。しかしそうであったとしても、起業したばかりの当初は、新しい出来事に戸惑うことも沢山ありました。
個人であっても事業は事業

個人事業を始めて最初の数ヵ月間は、「いただく報酬が先にあって、それによって仕事をする」という感覚が抜けませんでした。
しかし、個人であっても「事業」を進めるにあたっては、そういう感覚ではなく、もっと物事を長期的に、全体を通して見る必要があると考えるようになりました。
マーケティング用語で「LTV(ライフタイムバリュー)」という言葉がありますが、まさにこれに基づいて仕事をする必要があると感じています。仕事の相談をもらった際に、「いかに継続的に長い付き合いができるか」を意識して行動することが大切ということです。
LTVを意識して、顧客との関係性を大切にする
LTVを意識する、ということは「長期目線で物事を考える」、ということです。
たとえば、最初は安い単金でお試し程度の仕事を請けたとしても、次に大きい仕事を依頼してもらえれば、客単価の総額は上がります。逆にもし最初から大きな仕事をまかされて失敗してしまえば、先方をガッカリさせ、今後の仕事にはつながりにくくなってしまいます。
小さい仕事でも、引き受けて数をこなすようにすれば、少しずつ取引回数が増え、将来的に安定した収益へとつながっていきます。
ギブアンドテイクを意識する
ビジネスでは、「ギブアンドテイク」の「ギブ」をする人になると良いという話があります。
「ギブ」をする人とは「与える人」のことです。
与えるとは「モノ」でも「お金」でも「時間」でも良いですが、相手が「喜ぶ」ことが前提になります。
相手に与えたものによって、引き換えとして報酬を得ることがビジネスの基本です。得ることばかりを考えた場合、「ギブアンドテイク」の公式が成立せず、テイクを求めるだけの構図になってしまいます。
それでは持続する関係性を作っていくことは難しくなります。
マネタイズの手法が必要
ギブアンドテイクのギブは大切なことですが、中には相手にギブをしても、返さない相手もいます。
そうなった場合、自分が使った労力やお金は返ってこなくなります。
そうならないように、ある程度ルールを最初に決めて、お互いに条件に納得した上で取引を進めることが大切です。
単純に「この商品は〇〇円」と価格を設定してしまえば、それに納得した人が買ってくれるということになります。BtoBでの取引の場合、双方の協議の上、価格や内容を設定することも可能です。
個人事業主が組織に対して持てるアドバンテージとは?

事業を開始するにあたっては、「広告宣伝・広報活動」「営業」「サービス提供」「事務処理」「アフターサポート」等のサービスフローをすべてこなす必要があります。合同会社や、チームで活動される場合は違うかもしれませんが、基本的には「全部1人でやる」がスタート地点だと思います。
未経験でもやるべき仕事が多すぎる
限られた時間の中で、資金力があれば一部の業務を外注に出したり、外部サービスを利用するなどして時間を短縮し、もっと効率的にビジネスの流れを組み立てることができるかもしれません。
しかし、会社員から独立起業した場合、ほとんどの方が未経験で事業を始めることになり、「何をどうすれば」のところで引っかかる方も多いはずです。
そのため、たとえ業務ではその道のプロであったとしても、経営という部分でビジネスの流れを組み立てるまでに時間を要するため、最初から全てうまくいくケースは少ないと思います。
スキルアップした先に、担当者としての価値が生まれる
それを踏まえると、会社組織の場合、すでにビジネスの流れが組立てあり、個々に得意分野を持った人たちが集まって各業務に対応しているため、業務効率の面で個人よりも優位性が高いといえます。
ですが、個人事業主の場合は、過去に自分自身が経験してきた業務に加え、それ以外の業務もこなすことで、その人自身の全体のスキルアップにつながっていきます。
ビジネス全体を俯瞰的に見て判断する能力が高まる上、営業活動を行う中で新しい人間関係も構築されていきます。
そうなってくると、1人でスーパーマンのようなスキルを持つ人材に成長できるため、会社員として一部業務に精通した人材よりも、提供できるサービスの質が高くなる可能性が高まります。
起業することで人生にどう影響がある?

会社員と個人事業では、前者は決められたルール・与えられた環境で業務をこなす、後者は自分自身で組み立てて仕事を作る、ということ以外にも多くの違いがあります。
短期間で多くの経験値を獲得できる
個人事業を始めた場合、安定した収益とは無縁になり、常に考えながら行動を起こす必要があります。資金の管理も大切で、ときには生活費のために貯金を使ったり、借入れをしながら対応する場面もでてきます。
事務作業や営業活動も必要で、業務範囲は多岐にわたり、それを1人(または数人)でこなす必要がでてきます。
最初は当然大変ですが、大変なことを徐々にこなすことで、自然とスキルアップにつながります。
より広い範囲で活動する機会ができる
起業すると営業活動のために、交流会や商談会に参加する機会も増えると思います。
営業活動を含め、いろんな人と関わるうちに知り合いも増え、人脈も広がります。それによって、自分自身の周りにいる人にも変化がでてくるようになります。
会社員として組織の中に所属していると、どうしても中の世界にばかり目がいってしまいますが、起業をすることで外の世界へと活動範囲いが広がるため、環境を自分自身で作ることができるようになります。
責任の所在は自分にある
屋号を使って、サービスを提供するということは、すべての責任の所在も自分自身に属するようになります。
成功も失敗も自分自身のものになるため、それなりの覚悟も必要です。
会社員の場合、失敗した際の責任は、上司やチームのメンバーがフォローしてくれたり、責任を分担してくれることが多いです。また、よほど大きな問題でない場合、給与も規定どおり支払われます。
プレッシャーの面では個人事業はより大変だということができます。
人生の選択肢を迷ったときに考えること
会社員と自営業は業務範囲、責任、ビジネス環境と大きくさまざまな違いがあります。
起業は大変ですので、モチベーションを維持しながら、働くことへのやりがいを見つけないと、なかなか継続は難しいと思います。
今後のライフプランに向けて、
「これからの活動が、将来的な目標につながっていくか」
「現実的な課題に対して、リスクを背負ってチャレンジできるか」
という気持ちが、意思決定における重要なポイントになるかと思います。
精神論だけでは、現実的な問題と向き合うのに不足しているかもしれませんが、意志があってこその決断につながっていくと思います。1度しかない人生ですので、やりたいことをやってみましょう!この記事がご自身の将来設計のヒントになれば幸いです。